第23章 ゲーム(Ⅱ)
──1.2.3…ざっと10人は倒したかな。
以前起こしたようなサイクロン、とまではいかなかったけど、身体中の熱を一点に集めて思いっきり放ってみたら、うまい具合に吹き飛んでくれた。
あたりに散らばった男たちを見て、一体どこから飛んできたのやら、あたしの隣でサボがひゅう、と口笛を吹く。
「慌てて戻ってきたが、その必要はなかったな。まだやれそうか?」
「うん、へーき」
ちょっとばかり息を切らしてはいたけど、このくらいならまだ頑張れそうだ。彼はそれを聞いて笑う。
「いい返事だ。それなら、このあたりはお前に任せるぞ」
「いいけど、サボはどこに?」
「向こうに見覚えのある顔がいた。おそらく、決勝戦で戦った奴らだな。せっかくだからもう少し遊んで…」
「あそんで?」
変な言葉が聞こえて思わず聞き返すと、明らかにしまった、という顔をするその人。慌てて取り繕うように咳払いをして、
「あー…いや。どうせ向かってくるだろうから、おれは先にそっちを片付けてくる」
もっともらしい顔で、平然と本音を隠した。
そういえばこの人、物騒なコロシアムのことを"楽しい大会だった"なんて言ってなかったっけ。この状況を楽しんでいるように見えたのは、やっぱり間違いじゃなかったの?
何か言いたい気もするけど…ま、いいか。ここを平和に通り抜けるのは難しいってことは、あたしも分かったし。
「ん、わかった。あたしは大丈夫だよ。気をつけてね」
「おれの心配はいい。いいか、無理はするな。何かあったらすぐ呼べよ」
サボはやや気遣わしげな表情を浮かべたけど、あたしがこくこくと何度も頷くのを見て、信じる気になったらしい。すぐに戻る、と言い残し、彼は炎に紛れて消えた。
「…ふぅ。じゃ、ちょっとがんばろうか」
息を整えて、前を見る。
ローは、コラさんの妹であるあたしに、やや過保護なところがある。彼のことだ。危ない目に合わせたら、コラさんに申し訳が立たない、なんて思っているんだろう。
だからか、サボのこういう扱いは新鮮で。正直に言うと、かなり嬉しかった。
任せる、なんて。
実力を認められたみたいで気分がいい。
あたしだって、やればできるんだって。
守ってもらわなくても大丈夫だって。
──いつか、ローや麦わらのみんなにも胸を張って言えたらいいな。