第23章 ゲーム(Ⅱ)
そう。
残念ながら、あたしを倒してもどこからもお金は出ないの。ドフラミンゴはあたしを探すつもりはないみたいだからね。トリカゴの制限時間が迫ってるなか、リストに載ってない女なんて、相手するだけ時間の無駄だよー。
「あぁ。だが…」
……って。
あれ、どうしてだろう…。
なんだか……とても…イヤな予感がする…。
一番近くにいた、髭面の男と目があう。ごくり、と男が息を呑む音が聞こえた気がした。
「俺からだ…いいかお前ら、手ェ出すなよ」
なぜかギラギラと血走った目で、こちらを見てくる男。粘着質な低い声が聞こえて、ぞわわっと背中に悪寒が走った。
「なんなの、…?」
ニタニタと、それはもう気味の悪い薄笑いを浮かべ。男はあたしのほうへじりじりとにじり寄ってくる。露骨にすっっごく嫌そうな表情をしてみても、男の顔はだらしなく緩んだまま。
なんで、そんな目で見るのーー!?
本当に、すっごく、気持ち悪いんだけどっ!
ますます笑みを深くする男と対照的に、あたしの顔はものすごく青ざめていく。もちろん恐怖ではなく、生理的嫌悪感で。
──次の瞬間。
剣闘士の格好をしているくせに、腰に差した剣も抜かずに男が飛びかかってきた。
「だから!あたしを殺してもお金は出ないんだって、ば!!」
それをひらりと飛んでかわしてから、片手に力を込めて風を巻き起こし、吹き飛ばす。男は見事に反対側の通路まで飛んでいって、めきょ、と音を立てて無様に壁にめり込んだ。
「なんだ!?能力者か!!」
「なるほど、一筋縄じゃいかねェな。なら、倒した奴が手に入れるってのはどうだ!?」
「のった!!次は俺だ!!!」
好き放題、勝手なことを言って、飛びかかってくる男たち。その多さに、あたしはげんなりして叫ぶ。
「あーーーーもうっ!どうしてこうなるの!!」
倒したやつが手に入れるって、一体なによ!?
人のことを賞品みたいに言わないで!!
内心憤りながら、あたしは腰を落として息を吐く。
…こうなったらやけだ。
とことん、やれるとこまでやってみよう。
サボを目印に、なんて。
そんなことしなくたって、敵かどうかなんてこんなにすぐわかるんだから。