第23章 ゲーム(Ⅱ)
冗談なのか本気なのか…。
初めはそう怪しんでいたあたしだったけど、やがてサボのその言葉がうそではなかったと知ることになる。
集まってきた男たちを一撃で薙ぎ倒してあたりを火の海にしたあと、さらに飛びかかってくる敵を一網打尽に叩きのめした。目を離すひまもないくらい、一瞬のことだった。
「はっ、こうしちゃいられない!!」
束の間呆然としてしまってから、前線を動かしていくサボの後をあわてて追いかける。一人で残されても誰と戦えばいいのか分かんないからだ。
この状況で、誰が敵か味方かなんて区別がつかない。手当たり次第攻撃して、実はあたしたちの味方になってくれる人でした、なんて冗談でも笑えない。
だけど、ドフラミンゴのゲームを聞いて、懸賞金目当てでサボを襲ってくるものは、ひとまず敵と思っていいだろう。
彼を目印に、向かってくる敵だけ倒す。それが一番分かりやすそうだった。
一通り炎で覆い尽くしたあと、軽く腕を振ってその残火を回収し、サボはぐるりと辺りを見まわす。随分と見晴らしがよくなった、とは思うけど、それでもまだまだ敵は多そうだ。
「まったく。次から次へと…」
どれだけ蹴散らしても寄り集まってくる血気盛んな男たちを見て、サボはやれやれと言った様子でつぶやく。
だけど言葉の割に、サボの瞳は心なしか楽しそうで。
戦うのが好き…と言うより。
エースと一緒に戦えることを楽しんでいるみたい。
「火拳!!!」
またしても大きな火柱が上がり、とてつもない威力で彼が敵を吹っ飛ばすのを後ろから見ていた。その時。
「おい、女だ。女を狙え!!」
そう叫ぶ声が耳に届いた。
「わ、やば」
すっかり見物人を決め込んでいたあたしは、その声を聞いて慌てて戦闘体勢に入る。
前をゆく火を吐く怪物には歯が立たないと思ったらしい。そうなれば、その後ろにくっついているいかにも愚鈍そうな女を狙うのは、当然の発想。ではあると思うのだけど。
「見覚えのない顔だ。モニターには映っていなかったはずだが」
「じゃあ、そいつには懸賞金は掛かってないんじゃねェのか?」
あたしの顔を見て、男たちが首を捻る。あたしは名も知らぬ男たちの声に、その通り、と大きく頷いた。