第3章 白と赤
──異変に気づいたのは、丘をほとんど登り切り、教会が見え始めた時だった。
別に何がって言うわけじゃないけれど、かすかに感じる違和感。
遠くからでも分かる綺麗に整備された庭に、大きくて立派な門。何も変なところなんてないはず、なのに。
近づくにつれて、違和感はますます大きくなり、
──やがてあたしはそれに気づいた。
「静かすぎる…」
昼間なのに誰も外に出てないの。
子供たちが大勢いる教会にしては驚くほど静かだった。
雪が積もっているから?
そう考えてみるけど。
でも。そんなはずないでしょう?
普通こんな風に雪が積もっていれば、子供たちは大はしゃぎのはず。マリーゴールド教会では雪が降った時はみんな聖書を放り出して外に出て遊ぶのに。
まだ遠いからよく見えないけど、教会の明かりもついていない気がする。
そしてその違和感が確信に変わったのは、敷地内に入ってすぐだった。
開いている門から中に入ろうとして、思わず立ち止まる。
…嫌だ。これ以上前に進めない。
体が強烈に拒否する。
近寄るなと本能が止める。
だって。
風に乗って漂ってくるこれは──。