第22章 ゲーム(Ⅰ)
サボは、まじまじとあたしを見た。
それから、不意に気が抜けたように息を吐く。
「ま、頂上戦争って言った時の反応を見てりゃ、こっち側の人間じゃねェってのは分かるか。最後に聞くが、ドフラミンゴの妹ってのは本当か?」
それを聞いて、もしかするとこの人が本当に聞きたかったのはこれだったのかも知れない、と思った。
わざわざローや頂上戦争の話を出したのも、そこからあたしの素性を探るため?
「…初めからそう聞けばいいのに」
「気を悪くするかと思って」
よく考えてみれば、彼があたしを疑うのは当然のことではある。
革命軍はドフラミンゴの裏取引を止めるためにこの島に来たと言う。つまり、サボはドフラミンゴに動向を知られるのはまずいわけで。なのに、そんな敵の妹だなんていう奴が平然と一緒にいるなんて、戸惑うに決まっている。
怪しいとは思いつつ、初めに直球で聞かなかったのは、彼なりに気をつかってくれたらしい。
"ルフィを"信頼してないわけじゃない。
だけど、"あたし"自身の証明は自分でしなきゃいけないってことね。
どうもこの世界の人たちは一筋縄じゃいかないみたいだ。初めはルフィに似て能天気な人だと思ったけど、思ったより底が知れない人物なのかも。
「うん。それはほんと。だけど、あたしはドフラミンゴの仲間じゃないよ。血の繋がりはあるけど、ただそれだけ」
身の潔白を証明するべく慎重に言葉を選ぶ。
「……あたしね、"家族"って呼びたい人たちは別にいるの」
あたしを、マリージョアから自由にしてくれた人。
命懸けで愛してくれた人。
そして、こんなに大きくなるまであたしを大切に育ててくれた人。一緒に成長した子供たち。
「血の繋がりがあっても心が通わなきゃ虚しいだけ。それより、出会いは偶然だったとしても、確かな愛情を持って結ばれた絆の方がずっと信頼できるし、ずっとずっと大切だと思ってる」
これがあたしの本心だった。
その人たちのことを想うと、じんわりと胸の内が温かくなる。心の底から大切だと思う。
それには、ドフラミンゴを懐かしいと思う気持ちとは違う何かがあった。うまく説明できないけど、明らかに違う何かが。