第22章 ゲーム(Ⅰ)
神妙な面持ちで黙り込んでいると、
「────で、」
なぜかそこで、サボはうってかわって茶化したような表情をつくり、あたしの顔を覗きこんだ。
「そんな奴らがこぞって"お守り"をしてるお前は、一体何者なんだ??」
「お守りって…」
ふざけているのは分かっているけど、それでもあんまりな言いようだ。明らかにムッとすると、サボは少し真面目な顔つきでさらに言葉を続ける。
「ウチが持ってる情報では、麦わらとハートには風の能力者はいなかったはずだ。さっきの話じゃあ、ドレスローザの人間ってわけでも無さそうだが」
「……」
その言葉に、あたしはきゅっと寄せた眉を、今度は少し下げた。
サボの口調は決して問い詰める感じではない。
だけど、あたしにはやや難しい質問だった。
一口に説明するには複雑すぎる生い立ちだという自覚はあるし、なにより、出会って間もない人に自分の素性をベラベラと話すのは少し不用心な気もする。だから、ちょっと濁すことにした。
「どうしてそんなこと聞くの?あたし、そんなにあやしく見える?」
「いや、ただの興味だ。信頼してないわけじゃない」
サボは意外にもあっさりと答える。彼の言葉は嘘のようには思えなかった。
「こんな重要なロギアの存在がウチのデータベースから漏れてたのが気になってな。風なんか持ってる奴がいたなら、もっと有名になってていいはずなんだ。なのに、裏取引や闇オークションのリストにも、もちろん賞金首にも、お前の名が挙がっているところを見たことがねェ」
「そりゃそうよ。裏取引も闇オークションも、あたしには関係ない話なんだもん。普通に生きてたらそんな物騒な言葉出てこないって」
「そうか?」
「そうよ。あたしノースブルーの地図にも載らないような小さな島で育ったの。ほんの2年前まで、そこから出たこともなかったのよ」
これくらいなら、別に言ってもいいだろう。そう思って話したのだけど、サボはますます疑問を持ったようだった。
「お前、その能力を持っていながら、本当に今まで普通の生活をおくってたのか?どの組織にも属さず?」
「うん。別に有名になりたいとは思わないし」
何より、今まではその肝心の能力の存在を知らなかったからね。…てのは、ややこしくなるから今は言わないけど。