第22章 ゲーム(Ⅰ)
頂上決戦…から?
久しぶりにその単語を聞いた気がする。
確か、あたしがそれを知ったのは故郷の海の上だった。
あたしに帽子をくれた彼と一緒にいた時のことだ。甲板の上で、世経を見せたのを覚えている。
そしてその後すぐ、あたしたちは海賊に襲われてグランドラインに放り出された。白ひげの縄張りを巡って海賊たちが暴れ出したから。
…今思えば、あの事件を境に全てが変わってしまったのだ。
「頂上決戦の頃──約2年前までは、アイツらのことを調子に乗った若造と揶揄する輩もいたんだ」
サボの言葉を聞いて、改めてあの当時を振り返ってみる。
きっと、あたしたちの船を襲った海賊のような輩が、ノースブルーだけでなく世界中で活発に動き出したんだろう。当時は、ルフィやローもそんな中の一部と思われていたのかもしれない。
「だが、今はもうそんな奴は殆どいねェ」
「ローたちが、強くなったから?」
「あぁ。そしてこれからも強くなり続けるだろうな」
そこで一度言葉を切り、
「──おれ達は、アイツらがこれからの海を大きく変えるだろうと予想している」
そう続けたサボは、革命軍の参謀総長と聞いて納得するだけの、隙のない眼差しをしていた。ブラコンだと思わずこぼしてしまったさっきまでの彼とはまるで違う。
同世代の活躍を値踏みするような。
時代の行く末を見据えるような。
「…そう」
そして、そんな彼が言ったことで、あたしも気づいてしまった。
麦わらの一味の、おちゃらけているところばっかり見ていると忘れちゃうけど、こんなふうに彼らのことを見ている人がいることを知ると、改めて桁違いの人たちと一緒にいることを思い知らされる。
ルフィも、その仲間たちも、本来であれば紙面越しにでしか知るはずのなかった人たちなんだ、と。
そして。
──ついさっき、あたしに触れたあの人も。
結局、あたしが必死の思いで追いついたのは、物理的な距離だけで。本当は、背中なんてとうに見えなくなってしまっていて。
分かっていたはずだったんだけど。
ずっと、知っていたはずだったんだけど。
それでもやっぱり、その距離を思い知らされるのは、どこかつらいものがあった。