第22章 ゲーム(Ⅰ)
あまりにも悲壮な顔をしていたからか。
それとも、あたしが一度お城の方を見たことで何かを感じ取ったのか。
ローはぎょっとしたように一瞬止まった。
それから、ややあってひとつ、大きなため息を吐く。
「分かった、泣くな。おれが見つけてきてやるよ」
今度はあたしが慌てる番だった。
「いや、いいよ!あとで自分で探すから!」
探す目処なんてまったく立っていなかったけど、あたしは顔色を変えてローに言う。
本人も言っていたように、ローは今、そんなことに気を割いているひまは無いはずなんだ。
こんな大事なときに。人の探しものなんて。
あたしでも、それがどれだけ無理を強いることなのかは分かる。あたしの勝手な事情を押しつけ、お願いをするのは、図々しい以外の何ものでもない。
あたしは、ローの邪魔をしたくないし、足手まといにもなりたくなかった。
そう思っていた、のに。
「いいから。お前は長鼻屋を探すことに集中しろ」
「でも…っ!本当に、大丈夫!自分で何とかする!」
「……頼むから、これ以上心配事を増やすな」
だけどローは、疲れたようにそう言って、あたしの返事も待たずに、ふいとルフィに向き直ったのだった。
「麦わら屋、行くぞ」
ローの声に応じて、こちらを振り返るルフィ。
「サボ、ゆきんこ、また後でな!」
「ルフィ、何かあったらおれを呼べよ。どこにいても駆けつけるから」
若干重いとも取れるようなサボの言葉に、ルフィはぶんぶんと手を振る。
あたしも最後に、ローに声をかけようと思った。帽子は探さなくていいよ、って。時間を使わないでって。
ううん、それだけじゃなくて。
ちゃんとローに伝えたいことがあったの。
戦地に赴くその人に。
だけど。
「──シャンブルズ」
──あたしが彼に声をかけようとした時にはもう、
彼らの姿は跡形もなく消え去ってしまっていたのだった。
ロー、気をつけて。
無茶はしないでね。
──絶対に、戻ってきて。
そう、伝えたかったのに。
あたしは全部言えないまま、彼を見送ってしまったの。