第22章 ゲーム(Ⅰ)
「それじゃまあ、おれもそろそろ仕事するかな」
ルフィに会えたことだし、と気軽に言ってのけるサボ。帽子を深く被り直した彼を見て、あたしは少し首を傾げる。
「そういえば、あなたは何の用があってこの国に?」
まさか本当にルフィに会うため、なんてことはないでしょう?
「ドフラミンゴの裏取引を止めるためさ。奴のせいで近年物騒な喧嘩が絶えない」
「物騒なケンカ?」
「ああ、国同士のな」
「……狙いは軍事兵器か」
ローの呟きに、サボは僅かに目を細める。
「そうだ。この国のどこかにその製造工場と密輸船の交易港があるはずなんだが。知らねェか?」
ローはそれには答えず、何を思ったのかふと視線をルフィに移す。
「…麦わら屋。この男はお前の兄弟と言ったな」
「おう。昔、義兄弟の盃を交わした」
「そうか…」
それを聞いて少し目を伏せるロー。
彼が迷ったのが分かったらしい。ルフィはローを真っ直ぐ見てキッパリと言い切った。
「トラ男、サボは信頼できる奴だ」
ローがその言葉をどう捉えたのか。
表情からは分からなかった。
だけど、多分、ルフィの言葉は少なからず信用するに足るものだったのだと思う。
彼は少し黙ってから、改めてサボを見る。
「……なら、アウラと行け。そうすりゃ、お前の目的は果たせるだろう」
…?それってつまり。
「ローは、ウソップがその製造工場とやらにいると思うの?」
「おそらくな。それから、おれの読みが当たってりゃ、それがあるのはこの国の地下だ」
「どうして?」
「あれだけ巧妙に国民の目から闇を隠してきた男だ。地上で堂々と人を殺すための武器を造るとは思えねェだろ」
…なるほど。
あながち間違いでは無いのかも知れない。
確かに、この国からは明るく楽しそうな雰囲気しか感じられなかった。おそらく、大半の人々は裏で何が行われているのかも知らないに違いない。
ということは、簡単に人の目に触れないところ、それも、工場と言うくらいだからそれなりに面積を確保できるところ…ローの言う通り、地下が怪しいと思うのは至極まともな発想のような気がした。ウソップがどうしてそこに居るのかは分からないけど。