第22章 ゲーム(Ⅰ)
ドフラミンゴの顔が消えた後、ルフィが、んん?と首を傾げた。何やら難しそうに眉を顰めている。
「あれ、ゆきんこの名前なかったな。ミンゴ、諦めたかな」
「いや……。下手に金かけて殺されでもすりゃ向こうも困るんだろう」
ルフィの言葉に反応したのはローだ。
「確かにゆきんこすぐ死にそうだしなァ」
「大人しく諦めてくれたら楽なんだがな」
何を話してるのかと思えば…。
あなたたち、自分にかけられた額を見てなかったの?二人とも、人の話をしてる場合じゃないでしょう!
「じゃ、ミンゴはおれが倒してくっから、ゆきんこお前はここで待ってろ」
「ちょっと待ってよルフィ!そんな簡単に…」
「そうだ麦わら屋。勝手なことを言うんじゃねェ。ドフラミンゴを倒すのはおれだ」
「そういう問題じゃなくて!」
「トラ男もついてきていいぞ」
「ついてくるのはてめェの方だ!!」
たった今起きたことなんて忘れてしまったかのように言い合いを始める二人。
あまりにも緊張感がない様子にあたしは呆れてしまう。いつもは驚くほど冷静なローだけど、ルフィと居ると何故かぐっと精神年齢が下がってしまうみたいだ。
そして、目の前で喧嘩を始めた二人も、物騒な街の様子も気にしていないマイペースな男があたしの隣にも一人。その人──サボは、きょとんとした顔をあたしに向けた。
「なんだ。お前、自分の兄貴に追われてんのか?」
「え、っと。うーん、どうなんだろう。さっきまでそう思ってたんだけど……」
「煮え切らないな」
あたしは露骨に返事に困ってしまう。
だけど改めて思い返してもやっぱり、と思う。
城で話した時、言葉の割に全くあたしに執着している印象はなかった。実際、こうしてローとルフィとあっさり逃げてきちゃったわけだし。
そもそも、鉄橋にいたドフラミンゴの元に駆けて行ったのは紛れもなくあたし自身だ。城から逃げもせず、スートの間にわざわざ会いに行ったのも。
ドフラミンゴ自身が、あたしを欲したことなんて今のところ一度もないのだ。
「やっぱり、あの人誰にも興味なんかないんじゃないかな…」
最後は独り言となって消えた。
本当に、あの人は何が目的なんだろう…。