第22章 ゲーム(Ⅰ)
「そうか…。奴の妹なのか」
重々しく息を吐いた前国王。
あたしはもう一度謝罪の言葉を述べようと口を開く。だけど何かを言う前に、再び声を出したのはリク王の方だった。
「どうか謝らないでほしい。確かに奴のことは許せないが、その恨みを、無関係と分かっている者にぶつけるほど分別が無くなったわけではない」
「あの…っ、でも」
「人の責まで負おうとするのはやめなさい。君も好きで奴の妹に生まれたわけじゃない」
「でも、あたしは、」
それだけじゃないの。
ただ、妹だからってわけじゃないの。
あたしは…。
結局言葉には出せないまま、あたしは黙り込んで俯くしかなかった。
───あたしは、こんなに酷いことをしたあの人のことを、どうしても嫌いになれないんです。それどころか、懐かしくて、愛しいとまで思ってしまうんです。
こんなこと、この場の誰にも言えない。
間違っても、口に出せるわけがなかった。
こんな中途半端な気持ちで、あたしにできることはあるんだろうか。あの人に対面して、ちゃんと戦えるんだろうか。
『つれないな。…俺が憎いか?』
ドフラミンゴの声が耳の奥で蘇る。
また、さっきみたいに泣くことしか出来ないんじゃないだろうか。恨むことも憎むこともできずに、ガタガタ震えて泣くだけの無力な自分…。
本当に、情けない。
情けなくて、悔しかった。
みんなに迷惑をかけた分、これから頑張らないといけないのに。
あたしはどうしようもない思いを抱えながら、黙ってみんなの話を聞く。それぐらいしか、今のあたしにできることは無いことに気づいてしまったから。
その時一瞬、ローの視線を感じた気がした。だけど、あたしは、わざと気付かないフリをしたのだった…。