第22章 ゲーム(Ⅰ)
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この国の歴史を当事者たちから聞き、あたしは暗い気持ちでだまりこんだ。国を襲った悲劇は、想像をはるかに超えるものだったのだ。
パンクハザードでシーザーの所業を聞いた時は、心底許せないと思い、憤りをぶつけた。
だけど、今回の話はそうはいかない。
だって、あたしはアイツの。
この国に地獄をもたらした人の──。
「…ごめんなさい」
「おいやめろ。お前が謝る必要はねェ」
「ロー…だけど、」
悲しい気持ちでローを見る。
だけど、あたしは。
天竜人だからという理由だけで迫害された家族を知っている。清く善良な心を持っていたにも関わらず、天竜人に対する恨みを全て向けられてしまった一家を。
そうでもしなければ、虐げられてきた人々は怒りを鎮められなかったからだ。
それほどに、恨みは深く、強いものだったからだ。
──そういう出来事があったことを、あたしは知っている。
10年前、愛する人を自らの手で殺させられた人たちの苦しみはどれほどだっただろう。そして、それから10年もの間、大切な人をオモチャに変えられ、忘れさせられた人々の悲しみは。
失われた命も、時間も、もう元には戻らない。
その怒りが、あたしに向かないとは限らないのだ。
地獄を生み出した張本人の、実の妹であるあたしに。