第22章 ゲーム(Ⅰ)
「サボ、こいつはゆきんこって言うんだ」
「変なこと言わないでよ!あたし、あの、アウラといいます…っ、ルフィとは友達というか、いつも振り回されてるというか、たまにほんとムカついて殴ってやりたくなる…」
「ヘェ」
「あ、ちが…!でもさっきは助けてくれて…!!とにかく、その、仲良く、してもらってます」
突然現れたルフィの家族、それも、おそらく革命軍の重要人物に何を言っていいやら分からず、自己紹介とも言えないようなめちゃくちゃな挨拶をした後、あたしは冷や汗をかいて口をつぐんだ。
だって、ルフィのことを話し出したら思ったより愚痴が出ちゃって。それに、文句を口走った時、気のせいかも知れないけど一瞬、この人の目が怖かった気がして…。
「しっしっし。やっぱお前おもしれー奴だなァ。あ、そうだゆきんこ、お前おれの仲間になれよ!」
「は!?何を、そんなついでみたいに…!」
「いいじゃねェか。トラ男も仲間になったし」
「なってねェし、コイツもやらねェよ。次ふざけたこと言ったら消すぞ」
突拍子もないことを言い出したルフィに向かって、あたしの背後から不機嫌そうな声が飛ぶ。声の主は隣に立つと、案の定険しい顔をしてルフィを睨んだ。
「麦わら屋、仕切り直しだ。作戦を立てるぞ。──まずはこの国で何が起きているのか教えろ」
あたしはローの言葉でハッと我に返る。
本当だ、こんなことしてる場合じゃない!!
ルフィ兄の登場に驚いてすっかり忘れてたけど、あたしもそれが聞きたかったのよ!!
「ルフィ、あたしも気になってたの。そちらの人たちは一体…?あなたが持っていた人形って…っ、」
調子を取り戻して彼に尋ねると、
「それについては私から話そう…」
口を挟んだのは、先ほどの片足の男だった。
「……申し遅れたが、私の名はキュロス。──元"リク王軍"軍隊長を務めていた者だ。そして、こちらにおられる方は」
男はそこで言葉を切って、白髪の男を振り返る。
「この国の先代国王。リク王朝最後の国王──リク・ドルド3世だ」
明るい街中と対照的に、あたし達の間だけ沈黙が訪れた。
…前国王と、その軍隊長?
いよいよ只事じゃない雰囲気だ。
あたしはごくりと息を呑む。
──そして、あたしたちはこの国の壮絶な過去を知ったのだった。