第21章 約束
───どう思ったんだろう…。
今更、彼に隠す気はないし隠すべきでもないと思うけど、手紙の中身はなかなかに衝撃的な内容だったはずだ。純粋に、どう思ったのか気になる。
ローに聞いてみようと思った時、一陣の風が、腰まで覆うほどのあたしの長い髪をふわりとなびかせた。見慣れた銀色がふと、視界に入る。
──そうか…。
「…これも、意味のないことだったのね」
写真の中の両親は全くと言っていいほど、あたしに似ていなかった。ドフラミンゴも、ロシナンテも。
みんな、柔らかい金色の髪に、黒っぽい瞳をしていた。そのどちらも、あたしは持ち合わせていない。
例えこの家族写真の中にあたしが入ったとしても、誰も家族だなんて思わないだろう。
──はじめから、これを目印に両親が見つかることなんてなかったんだ。いくら伸ばしても、意味のないことだったんだ…。
小さい頃から、自分のルーツを知る手がかりになると思って大切にしていたものが、まるで意味をなさないものだったと知るのはやはりいくらかショックだった。
「どうした?」
「…ローは、どう思った?」
「何がだ」
「この手紙を読んで、なにか思わなかった…?」
「肝心なところが一つも書いてねェ」
「肝心な…?何のこと?…………ってそうじゃなくて!!」
予想していたものとは全然違う返事がきて、あたしはぐい、とローに詰め寄る。ちょっとやけになっていた。
「ローは、これを読んで不気味だって思わなかった?気持ち悪いと思わなかった?」
ローは変なものを見るような顔をする。
「何でそう思うんだ」
「だって!あたし、よく分かんない施設で生まれたんだよ。変な装置に囲まれて、管をつけられて、まるで実験動物みたいに。生まれるずっと前から意識はあったなんて、とても普通じゃないでしょう。実際のところ、そんなんじゃ、本当にロシナンテの妹なのかも怪しいし…」
自分で言ったくせに、口から出た言葉に驚いてしまう。
「そう、…本当に、そうだよ……」
手紙に書いてあるからって、ドフラミンゴがそう言ったからって、あたしがドンキホーテ一族の血を引いてる確証なんてどこにもないんだ。
一回そう思ってしまうと、ますます嫌な方向に考えが向く。