第21章 約束
おそるおそる目を開ける。
降り立ったのは、王城から遠く離れた港街だった。
周りよりひとまわり高い建物の屋上。
眼下にやや慌ただしい街の様子が見える。
そして、今あたしの目の前にいるのは…。
「……ロー……」
金色の目にじっと見つめ返されて、ちゃんと彼の視界に入っていると分かる。
──どうして二人きりなんだろう…?
ルフィたちも一緒に移動したはず。
だけど周りには見当たらない。
どこかではぐれちゃった?
疑問に思ったけど、今のあたしにとってはちょっとありがたいことではある。
頭の中を整理する時間が欲しかった。ぐちゃぐちゃになった感情を見つめ直す時間も。みんなの前でいつものように振る舞うには、あまりに多くのことを一度に知りすぎてしまったから。
そして、できれば少しの間だけでいいから、今目の前にいる人にそばにいてほしいと思う。
今起きたこと。
分かったこと。
心の中にある想いも。
全部、ローに打ち明けてしまいたかった。少し視線を下げてから、もう一度ちゃんと彼の瞳を見つめ直す。
「ロー、あのね………あたし、思い出したの」
こうして改めて向かい合うと、あたしは彼に話さなきゃいけないことが本当にいっぱいあると気づく。
あたしも、そしてローも、今まであの人の話題に触れてこなかったから。お互いにとって、大切な人はずっと一緒だったのに。
何から話そうかと迷いながら、何度か口を開こうとして止まる、というのを繰り返していると。
「……………悪かった」
ぽつり、と声が落ちてきた。
考えているうちにだんだん下がっていた視線を思わず上げる。
聞こえた言葉が信じられない。だって。
「え……?…どうして…、どうしてローが謝るの…」
勝手に出ていって、危ない目に遭って、みんなに迷惑をかけたのはこのあたしだ。
ローに謝られる理由なんて一つもない。謝らないといけないのは、むしろ、あたしの方なのに。
困惑してローを見つめると、彼は小さく息を吐く。それから、憂鬱そうにその口を開いた。
「ドフラミンゴから聞いたんだろう。………お前には先に話しておくべきだった」
「それは、」
金色の瞳に暗い影がかかる。
この目をあたしは知っていた。
──この人が苦しそうな顔をするのは、あの人の話をするとき。