第21章 約束
「…呪いが解けたか。どうやら早急な対応が必要なようだ」
地面に落ちた後頭部から声がした。
「何故まだ生きてる!?不死身なのか!?!?」
驚く片足の男を嘲笑うように、首のない身体がむくりと起き上がる。
──彼は、死んでない…?
よく見れば、ローの能力で斬ったわけでもないのに、一滴も血が出ていない。斬り口から無数の糸が飛び出ていて…。まるで作り物のような体。
不気味に感じるはずなのに、生きていると思った途端、自然と力が抜けた。身体中から滲み出ていた殺気が鎮まる。
今の今まで心を掻き乱していた妙な昂りも、嘘みたいに消えていた。
もう、あたしが怒る理由はどこにもなかった。
「……何なんだ一体…。おい麦わら屋、一度退くぞ」
「なんだ!?」
「そいつは偽物だ!!ここで時間を食うわけにはいかねェ」
「………!?おう、分かった!トラ男、おっさんらも一緒に頼む!!」
ローが鋭く声をかけ、混乱しながらもルフィが応じる。
確かにローの言う通り、ドフラミンゴが生身の人間とは思えない。どういう能力か分からないけど、これが本物じゃないということは、本体は別のところにあるということ。
それなら、ここにとどまっていても意味がない。
他のところで何かをしようとしているなら、むしろ仲間たちが心配だ。
「…わ、っ」
ローは無言であたしを抱え直すと、能力を発動する。
「──ロー、やめておけ」
その時、ドフラミンゴの声が聞こえた。
「その女はお前の手には負えねェ。悪いことは言わん、手を引け」
ドフラミンゴの声には一切笑いは含まれていなかった。挑発でもなく、牽制でもなく、どちらかと言うと、真剣な警告のような…。
ローはそれに返事をしなかったけど、どうやら聞こえなかったわけではないらしい。あたしの背中に回した腕に少しだけ力を込められたから。
「奴らを逃すな!!!」
「早く捕らえろ!!!!!」
そして、あたしたちは、凄まじい怒号を後に、
「───シャンブルズ」
──一気に王宮から脱したのだった。