第21章 約束
突然の展開に頭がついていかない。
ゴロゴロと転がるドフラミンゴの頭部。
「……うそ」
こぼれた声はわずかに空気を震わせたけど、ほとんど音にはならなかった。今見ているものが信じられない。
──うそ、うそだ。
そんなの。だって。
だって、あたしは。
心臓が急に早鐘を打ち始める。
どくどくと熱い血液が身体を循環し、色んな感情が目まぐるしく心の中で渦巻く。
驚きと、絶望。
そして多分…これは怒り、だ。
あたしは今、何故か激しい怒りを感じているのだ。息をするのすら苦しいとさえ思うほどの。
「ミンゴが死んだ!?」
ルフィが驚いた声を上げる。彼が持っていたはずの兵隊はいつのまにか消えていることに気づく。
代わりに、すぐ近くで大柄の片足の男が剣を構えている。
駆けて行ったのはこの人。
そして、ドフラミンゴの首を落としたのも。
───……ゆるせない。
不意にそう思った。
憎い相手が死んでどうしてここまで怒りを感じるのか。絶望しているのか。今は全部どうでもいい。
ただ、彼を殺したこの男に腹が立つ。
何もできなかった自分自身にも。
守らなきゃいけなかったのに。
あたしが、そうしなきゃいけなかったのに。
「……たしが、…ろさなきゃ……」
「アウラ、おい」
さっきまで使えなかった能力が、今なら思いのまま操れると分かる。むしろたぶん、いつもより強力に。
ローが異変に気づいて、あたしの腕を掴む。だけど、あたしはすでに手のひらの中で起こしていた風を収めることはしなかった。
ローの言葉じゃ止まることはできない。
あたしが止まるとしたらそれは…。