第20章 遺書
恐怖。畏怖。絶望。
涙腺が壊れてしまったみたい。
涙だけが後から後から溢れ出る。
『アウラ』
何故か一瞬、昨日のことを思い出した。
『…いいから一回落ち着け』
そう言ってあたしに触れたあの人の手は、どこまでも優しくて、あたしを安心させるものだった。知らぬ間に強張ってしまっていた体を溶かすように、ふっと力が抜けたのを覚えている。
その背後には麦わらのみんながいて。
みんな相変わらずの自由さで笑っていて。
無性にみんなが。
ローのあの手が。
懐かしくて、眩しいと思った。
──どうして、あたしはこんなところにいるんだろう…??
ここにいたくない。
ここは、あたしの居場所じゃない。
──ローに、ルフィーに、ナミに…。
みんなに、会いたい。
大丈夫だって。
一緒に笑っていていいんだって。
そう言われたらきっと、安心できる気がした。
──みんなの元に、帰りたい。
突然生まれた強い想いに突き動かされて、ぐっと、足に力をいれてみる。
早くここから逃げたい。
それしか考えられなくなって。
「無駄な足掻きはよせ」
「……っやだ」
唇を引き結んで、睨みつける。
まともに会話するから混乱させられるんだ。
もう何も聞いてやるもんか。
この人のことが懐かしいのも、胸の内に深い哀しみが広がっているのも、今はもう、どうでもいい。
──あたしは、みんなの元に帰るんだ。
そう思った。