第20章 遺書
≪ ○年●月△日 ≫
今日、いつもより少し早い時間にお嬢様の元に訪れました。レヴェリーが近づくにつれ、様々な噂が耳に入ってきていてもたってもいられなくなったのです。
ところが、扉を開けたときお嬢様はそこにおられませんでした。
この部屋に隠れる場所なんてない。ドアに鍵はかかっていませんが、近くには常に警備の者が控えておりますし、そもそもお嬢様が一人でここを出られるはずがない。
お嬢様に何かあるときは必ず、同じく地下にある使用人部屋まで警備の者が私を呼びにくることになっています。
今日は呼ばれていない。
警備の者もこの部屋には誰も入れていないと言う。
なのに、お嬢様がおられない。
彼女を探して地下を走りながら、私は生きた心地がしませんでした。
どこかに行ってしまった。
まさか連れ去られた?
不安と心配で気がおかしくなりそうでした。
幸いなことに、お嬢様はすぐに見つかりました。
地下の薄暗い廊下をいくつか曲がったところで、お嬢様の特徴的な髪が視界に入ったのです。廊下の隅で小さな膝を抱えて座り込んでいる彼女。
「ああ、見つかっちゃったね」
そしてその隣で私を見て困ったように笑ったのは、この間の天竜人の少年でした。