第20章 遺書
私は酷く絶望しました。
この不条理な世界に。
そして、私自身にも。
彼らがここを去られる時、間違っても連れて行ってほしいだなんて図々しいことは言えなかった。
ですが、やはりあの時言えばよかったのです。
何がなんでもここに置かないでほしい、と。
あなた方ご一家がおられないこの場所になんの意味もないのだ、と。
旦那様のもとにいた使用人が、このような気持ちを抱えていたことを、彼らを惨たらしく痛めつけた人々は知りません。
彼の心がどれほど澄んでいたか知ろうともせず、"天竜人"という肩書きだけを見て、一家を吊し上げ、拷問して、この世の兇悪を断罪した気になっている……いえ、そうせずにはいられないほどの憎しみを、天竜人に植え付けられた人々。
不幸なことに、そうした世の中の天竜人に対する憎悪という憎悪を一身に受けてしまわれたご家族。
誰が悪いとか、どちらに正義があったとか、そういう話ではないのです。
だからこそ、全てがやるせ無く、苦しく、いたたまれない。今思い出しても、涙が滲むほどに。
…最後に。
二人のご子息たちの行方についてですが…。
当時、私が聞いたのは旦那様と奥様の訃報のみであり、それ以外の何も知らされませんでした。どれほど周りの者に尋ねてみても、ドフラミンゴ様とロシナンテ様の消息を知るものは一人もおりませんでした。
二人のご子息はその事件を境に、この世のどこからも姿を消されてしまわれました。
もしかすると、かの事件のどさくさにより彼らもまた命を落としてしまったのではないか。
…とも思われました。
実はこの後また別の意味で驚かされることになるのですが…。いえ、この続きはまた今度書くことにしましょう。
──とにかくこれが、私の敬愛するホーミング聖ご一家に起きた一連の悲劇でございました。