第20章 遺書
その頃、ドンキホーテご夫妻には、歳の近い二人のお子様がおりました。
長男ドフラミンゴ様と次男ロシナンテ様。
旦那様と奥様の容姿を受け継いだ、天使のような男の子たち。
幼かったこともあり、私は身分の違いもよく分からぬままご子息様たちと一緒に育ちました。
お二人は容姿こそよく似ておられましたが、性格は正反対と言ってよいほど違っていました。
ドフラミンゴ様は剛毅で豪胆なお方。幼い形ではありましたが、常に勇ましく、そして……天竜人らしい残忍な一面も持ち合わせておられました。
……当時、あの方が奴隷を何人も囲っていらっしゃったのを私は知っています。
一方、ロシナンテ様はあのお二人のご子息らしい、とても優しい方でした。無礼にあたるのを承知で書きますと、やや気弱な性格であられたと思います。
外で遊ぶより、内で読み物に耽ることを好まれました。特に下界で流行っている絵物語がお好きでした。あれは確か…"海の戦士ソラ"と言いましたっけ。私も横に座り、よく一緒に眺めたものです。
歳が同じだったこともあり、私はロシナンテ様にとても懐いておりました。…今になって思いますが、あの人のおそばにいる時が一番心休まる時間だったような気がします。
マリージョアでの生活は一点の曇りもなき幸せ、とは言い難かったですが、それでも、ホーミング聖一家の周りは穏やかでとても居心地が良いものでした。
──19年前、彼らがこの場所を去るまでは。
…慣れないことをすると時間ばかりかかって仕方ないですね。机に向かって随分経ちましたが、まだ1枚にも満たないなんて。
少々疲れてしまいました。
今日はこのくらいにしておくことにします。
また時間ができましたら、少しずつ。