• テキストサイズ

マリージョアの風【ONE PIECE】

第20章 遺書


初めに彼に出会ったのは、私の母でした。
25年前。ちょうど、私を身籠った頃のことです。


母はもともと、シャボンディ諸島に住むただの街娘でした。ある日突然、名も知らぬ天竜人に無理矢理この場所に連れて来られたそうです。


ここではそういう境遇の人は決して珍しくありません。大抵は数日も経たぬ間にここでの生活に耐えられなくなります。…具体的に書くことは控えますが、秀でた容姿を理由に連れて来られた女にとって、ここは地獄だと言うことです。


一つだけ言うとすれば、そうですね……。私はおろか母ですら、父親が誰かは知らない、と言えばここの地獄が少しは想像がつくでしょうか。


母を孕ませた者が誰なのか、それは誰にも分からぬのです。

つまり、ここは、そういう場所なのです。






生まれつき病弱であった母は、長く天竜人の狼藉に耐えられるほど強くはありませんでした。子がいると知った時にはもう、生きながらえる気力もなく、腹の子(つまり私ですが)とただ死を待つのみ、という状況だったそうです。



絶望の淵にいたそんな母を救って下さったのが、ホーミング聖でした。


彼は母を匿い、使用人に召し上げることで居場所を与えてくださいました。いえ、それどころか旦那様も奥様も、母を家族同然のように迎え入れて下さったのです。


表向きには使用人だと言いながら、彼は、母を含めた使用人たちに奴隷の証である首輪をつけませんでした。


マリージョアでそんなことをなさるのは、あの方ただ一人でした。


──それから数ヶ月後。
旦那様と奥様の温かい援助を賜り、母は無事出産を終えました。



/ 716ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp