第3章 白と赤
3日間、ミロは暇を見つけては勝負を挑んできた。
その度に軽くいなしてとん、と弾き飛ばす。
全力かと言われれば嘘になるけど、必要以上に甘くしたりはしない。手加減して強くなるなんてことはないから。
それはもう身をもって教え込まれたからね。
「強くなれ」と言ったあの黒い青年に。
目の前で伸びているミロを見るとあの頃の自分と重なって少し笑ってしまう。
あの頃はよく身体中ボロボロになって帰ってシスターにびっくりされたっけ。毎回言い訳を考えるのが大変だった。
思い出すと腹が立つくらい、ローは本当に容赦なかった。
いや、多分すごく手加減してくれていたんだろうけど、今までろくに喧嘩もしたことない少女に教えるやり方ではなかった。
蹴り飛ばされてどこまでも飛んでいくあたしに向かって受け身を取れと怒鳴る。そのくせ間髪入れずに次の攻撃を繰り出そうとするんだから、本当に鬼かと思った。
打ちつけた肩も足も痛くて、涙目で何回ももう二度とやらないと叫んだけど、負けたままのあたしを鼻で笑ってくるローを見てると悔しくて結局何度でも挑んでしまう。
そうやって毎日毎日稽古?(憂さ晴らしではなかったと思いたい)を繰り返すうちに、そこそこは強くなれた。と思う。
少なくとも、あの仏頂面に多少の笑みを浮かべさせる程度には受け身も攻撃も上達した。
教えてくれたのは体術だけだったから、ローが他に何ができるのかその全貌は知らない。どこまでも掴みどころのない人だった。
何かを聞こうとするとお決まりの無視で、そうしているうちに突然あの人は島から姿を消してしまったから。
結局一緒に過ごしたのは10歳から13歳になるまでの3年ほどだった。