第3章 白と赤
ふ、ふふふ。
かっわいーーい。あたし、この子結構好きかも。
なんだろう、このからかいたくなる感じ!
「いいけど。まあ、簡単にぶっとばされる奴に言われてもね。もうちょっと強くなれたらいいな、お前も」
仕返しとばかりに、そう言ってニヤッと笑ってやると、途端に今度はむすっとした顔になる少年。
「別に好きでぶっとばされるわけじゃねェよ!…そう言うおまえはけんか強ェのか?」
あたしはちょっと考えたけど、昨日のミロを思い出してさすがにああはならないかなと軽く頷いてみせた。
「まあ、そこそこは」
するとミロは拗ねた様子から打って変わって、パァっと顔を輝かせた。本当にコロコロと表情が変わる子だ。
「ならさ!ちょっとだけ相手してくれよ!おれいつもみんなにやられるからよー。ギャフンって言わせてやりてェ!おねがい!」
「ギャフン、ねぇ」
少年、ギャフンは死語だよ、死語。
そんなことを思いながら、あたしは昨日ミロをぶっとばしていた男を思い返す。
うーん、さすがにあの体格差は無理あるんじゃないかなぁ。
本来、体格差があっても体幹と筋力、丈夫な体があれば別に問題ではない、けど。
ミロのひょろっこい体をじっと見る。
うん、今の感じだとどう考えても無理だ。
そう思ったけど、闘志に燃える少年にあえてそれは言わなくてもいいだろう。
あと3日程度でいきなり強くはなれないだろうけど、ま、いいか。
なにしろ、あたしはこのどこまでも真っ直ぐで明るくてからかいがいのある…おっと失礼、可愛らしい少年がかなり気に入ってしまっていたから。
「いいよ。みんなの邪魔にならない程度になら」