第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
「──かつて、コラソンと呼ばれていた男だ。その椅子に座るにふさわしい男だった」
ドフラミンゴがあたしを指差す。正確に言うと、あたしの後ろにあるハートの席を。
それを横目で見ながら、あたしは封筒の中のものを取り出した。古い手紙が数枚入っていた。
ゆっくりとそれを広げると、手紙の間に二枚の写真が挟まっていた。
一枚目に視線を落とす。
写っているのは、優しそうな男性と女性。その下にはやんちゃそうな男の子と、少し気恥ずかしそうに笑う男の子。
全員、柔らかい金色の髪をしていて、身なりの良い服装に身を包んでいる。
だいぶと色褪せていたけど、それはどうやら家族写真のようだった。
「そこに写っているのは、世界一気高い一族だ。生まれただけで偉い…。世界政府の創造主の末裔達。マリージョアに住み、そう──俺は生まれながらにして、この世で最も得難い力を持っていた」
思わず顔を上げてドフラミンゴを見る。
「生まれ持った世界一の権力を、愚かな父が放棄するまではな」
「あなたは天竜人…だったの…?じゃあ、ここに写っているのって。…まさか」
「俺の"元"家族だった奴らだ。そして、当然お前の家族でもある」
あたしはびっくりして、もう一度その写真を見た。
──あたしが天竜人の血を引いていて、この人があたしの家族だって??
いつか会いたいと思っていた、あたしの、血の繋がった家族…?
「フッフッフッ、混乱するのも無理はない」
あまりにも突然で現実味がない。
急にそんなことを言われても…。
この人たちが、あたしのお父さんとお母さん…?
それに…。
「…あたしにはもう一人兄がいたのね」
「──あぁ。それが、お前の後ろの席に座っていた男だ」
「後ろの席…ハートの…?それじゃあ、この人が、"コラさん"…?」
重たい前髪のせいで口元しか見えない。
幼少期の写真だし、ローが知ってる面影なんてどこにもないだろう。
それでも、あたしはその少年を食い入るように見つめた。何故か、目が離せなくなった。