第3章 白と赤
詳しく聞いてみると、なんとこの少年、まさに今から行こうとしている教会の出らしいのだった。
数年前までそこで育てられ、海に憧れて商船の見習いになった、とキラキラ光る目で話してくれる。歳は13歳と言った。
ミロはパール島のその教会をものすごく愛しているようだった。
「シスターがめっちゃ怖いんだぜ!」
と言う割には話す目が楽しそうで、聞けばそれは彼が悪さをするからで、本当はすごく優しいのだそう。
少し照れながら話す様子からその教会が素敵なところだということが分かる。
うん、あたしも行くのが楽しみになってきたかも。ジョナサンを預ける前に情報を聞けたのは良かったかもしれない。
1人頷いていると、少年は突然、まじまじと顔を覗き込んできた。
「しっかしおまえ、えらく可愛らしい顔してんのな。ほんとに男か?」
「…えっ」
言われてあたしはハッとする。
そう言えば船に乗ってから声も立ち振る舞いもあんまり意識してなかったかも。
一瞬、しまったと思ったけど、すぐに今更別にバレたってどうってことないかと思い直す。
次からの港の仕事の時に何か言われるかもしれないけれど、ずっと働いてきたわけだからここにきて追い出すなんてことはしないよね。流石に。
だからまあ、女だって言ってもいいかな。
と思ったんだけど。
…なんだろう。このむず痒い感じ。
いたずら心が顔を出す。
あたしはちょっと俯いて笑いそうになるのを堪えてから、わざと不機嫌に顔をしかめてみせた。
「割と気にしてるんだけど、それ」
すると、すぐに慌てたように手を振る少年。
「いや!別に悪気があったわけじゃねェ!わるかった」
心底申し訳なさそうな顔をして弁明する様子を見て、またちょっと笑ってしまう。