第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
「その人はローと仲がよかったの?そんなに?」
ベビーファイブは微かに頷いて、顔を歪ませた。
「私はそうだと思っていたけど。…むしろ、今まであんたが何も知らずにいたことがおめでたくて笑っちゃうんだけど」
「知る機会がなかったの」
ベビーファイブの言葉は相変わらず辛辣だったけど、さっきほどムッとすることは無かった。こんなに教えてくれる人、今までいなかったんだもの。
だから、彼女に向けて言葉を付け加える。
「つい最近まで、あたし、自分が無知だってことにすら気づいていなかったの。…でも、そうね。あなたが今とても貴重な手がかりをくれたのかも。ありがとう」
「ありがとう…?私、役に立った!?」
「え?…う、うん。とっても」
途端に、さっきまでの嫌悪の眼差しはどこへやら、何故かキラキラと瞳を輝かせる彼女。あたしに飛び付かんばかりに近寄って、嬉しそうに話し出す。
「別に秘密にしてるわけでもないし、あんた、どうせうちのファミリーに入るんでしょ。知りたいならもっと教えてあげる」
「急にどうして、なん…」
「あのね、コラさんは本当はコラソンっていうの。名前じゃなくてコードネームのことよ。4つの最高幹部の席の内、ハートの席に座る人をそう呼ぶの。ちなみにさっきから私が言っているのは二代目のコラソンのことで…」
「ちょ、ちょっと待って!ストップ!」
早口で一気に言ってのけるのを、あたしはやっとの思いで止めた。彼女の豹変ぶりに驚いて、言ってることは半分以上理解できなかった。
「教えてくれてありがとう。とても助かったんだけど、あたしが知りたいのは、つまり、その…。コラさんがローにとってどういう存在だったかってところなの。例えば、命の恩人だった…とか」
話の途中で遮ってしまって、気分を悪くさせちゃったかなと思ったけど、彼女は全く気にしてないみたいだった。にっこりと笑って答える。
「命の恩人よ、そりゃあ。コラさんがローの珀鉛病を治すために病院を探しまわったの。それから、ローにオペオペの実を食べさせたのもコラさんよ」
「そう、なの…」