第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
…それはちょっと、酷い誤解だ。
むしろその逆で、まさについさっき、戦力にならないから一人仲間はずれにされていたくらいなのに。
そもそも、彼の人生にあたしが必要だったなら、間違っても島に置いてきぼりになんかしない。
二度と会わない気で、行き先も知らせず、勝手に消えたりなんかしないでしょう。
…まあ、それを彼女に言ったところでどうしようもないんだけれど。
そんなことより、今聞くべきなのは。
「ねぇ、"コラさん"って…だれ?」
初めて聞く名前だ。
若がドフラミンゴのことだっていうのは、さっき気付いたけど、"コラさん"ってのは一体誰のことなんだろう?ドンキホーテファミリーの一員?
悪気なく、心底疑問で聞いてみただけだったのに、ベビーファイブはこれ以上ないというくらい気分を害したようだった。
何も言わなくても、あんたそれ本気で言ってんの?と顔に書いてある。どうしてそんな反応をするのか分からなくて、あたしも思わず眉間に皺を寄せてしまう。
…モネもこの人も。
あたしが何も知らないことがまるで罪であるかのように、呆れ、哀れみ、ついには怒りを込めて非難する。
あたしだってもう、こんなのうんざりだった。
いい加減腹が立って、強めに言葉を返す。
「ねぇ、答えてよ。コラさんっていうのは、このファミリーの人?あたしを必要としてるなら、それくらい、教えてくれたっていいでしょう」
彼女はしばらく黙ったけど、やがて、どうしようもない子供の相手をするように大きくため息を吐いた。
「ローがあんたを連れてたから、どうせコラさんが仕組んだんだろうと思っただけ。ローがあんたの存在を知っているはずがないから。教えるとしたら、あの人以外考えられない」
それを聞いて、妙なひっかかりを覚える。
これはもしかして、とても重大なことを聞いているのかも知れない。
あたしは少し緊張してくるのを感じていた。
ドンキホーテ・ファミリーの一員で、ローも知っている人。さらには、ローはその人からあたしのことを聞いたはずだと言う。
つまり、あたしがずっと知りたかったこと──ローがあの島に来た理由は…。