第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
ベビーファイブに続いて長い廊下を歩きながら、あたしはグリーンビットにいた時のことを思い出していた。
あの場にはサンジやナミたちがいたはずだ。
あたしが衝動的に鉄橋まで駆けてしまった時、彼らの反応を見る余裕はなかったけど、きっとものすごく驚いただろうし、今もあたしの行動に疑惑を抱えているに違いない。
あれだけ彼らの作戦を妨げてはいけないと思っていたはずなのに、こんなふうに一人敵地に来てしまっていることに急に申し訳なさが押し寄せてくる。
それに、ローは。
目的合理主義・作戦第一の人だけど、誰かが欠けた状態で平然としていられるほど、冷酷じゃない。再会してから何かとあたしを気遣ってくれているのも知っている。
今頃きっと心配して…いや、あの人のことだから、ものすごく怒っているだろう。
人を殺せそうなほど冷たい視線を向けるローが、目に浮かんだ。あたしの勝手な行動のせいで作戦に支障が出たなら、それこそ彼の逆鱗に触れることになる。最悪、ここを出たあと船を降ろされるかもしれない。
ますます憂鬱な気持ちになって思わずため息をつく。次会った時は真っ先に謝るつもりだったけど、もう一つ謝ることが増えてしまった。
今回ばかりは、あたしの行動に文句を言われる筋合いはない、なんて無責任なことはどうしても思えそうに無かった。
せめて、あたしがドフラミンゴを引き留めている間に作戦がうまくいけばいいんだけど…。
「あんたはいいわよね。誰からも必要とされて」
「え?」
あれこれと考えていたあたしは、ベビーファイブの突然のつぶやきにうまく反応できなかった。
彼女がちらっと振り返ってあたしを見たから、やっと自分にかけられた言葉だと気づく。
…あんたはいいわよね?
あたしが?
「若も、コラさんも、ローも。あんたのことばっかり」
決して友好的でない眼差しを向けながら、そんなことを言う。あまりに検討はずれな言葉なものだから、意味を飲み込むのにやや時間がかかってしまった。
何を言っているんだろう、この人は。
あたしがローに必要とされている?