第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
実際、アウラには言っていないが、出会ってからも何度か街に出向いたことがある。何故コラさんはこの島を選んだのか、その真意を探るためだ。
そして、街の様子や島の特徴から、最近ではある疑念を抱いていた。
──お前は自由だと、あの人が言ったはずなんだが。これじゃあまるで…。
アウラはこの島を平和で長閑な島くらいにしか思っていなかっただろうが、俺は初めて訪れた時から違う印象を持っていた。僅かに抱いていた違和感は訪れる度に増し、最近では確信に変わってきている。
大海賊時代にしては珍しく、この島はあまりに外交が少ない。やって来る船は一月に僅か10隻ほど。それも貨物を運ぶ小さな商船が殆どで、旅客船は俺の知る限り来たことはない。海賊も海軍も一切寄り付かない島だった。
ここに住む連中も、島内である程度の生活は満ち足りることもあってか、あまり外の世界に関心を持っていないようだった。地方紙に載るのは隣島や本島の情報ぐらいで、国外の情報を知る手段が限りなく少ない。有名な経済新聞すら出回っていないのが現状だ。
殆ど身内に近い島民だけの、あまりにも狭いコミュニティ。
──"閉鎖的な島"
それが俺がこの島に持った印象だった。
極め付けに、コイツの足首に付いている海楼石。初めて出会った時に気付いたそれは、一度も外すことはなく常にアウラの足首にあった。
──島が見えねぇ檻だとするなら、海楼石は差し詰め足枷ってところか。
能力者が海楼石に縛られて"自由"なわけがねぇ。何の能力かは知らねぇが、それだけは確信を持って言える。俺が知っているあの人は、何があってもそんなことするような人じゃなかった。
だが、アウラを島に連れてきたのは紛れもないコラさん自身だったし、海楼石を付けたのもコラさんだとコイツは言う。
俺を自由にしてくれたあの人が?
普通こんなことするか?何のために?
──閉じ込めてるようにしか思えねェんだが。