第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
俺は島に居ない時の方が多かったが、それでも近くを通れば少し遠回りをしてでも足を運ぶようにしていた。
そうして数ヶ月おきに立ち寄ることを繰り返す内に、気づけば出会ってから一年が経っていた。
一目見て終わりだと思っていた関係がここまで続くとは微塵も思っていなかった。だが、俺がしばらく姿を消すたびにアウラが泣いていることを知ってからは、少々無理をしてでも会いに行かねぇわけにはいかなくなった。
…正直に言うと、この奇妙な関係に少しの居心地の良さを感じていたのも事実だった。
「ローにとっておきの景色を見せてあげる!この島であたしが1番好きなところ!」
ある日の夕方、いつものように突然森の中に現れた俺を見て、アウラは少し驚いた顔をした後、開口一番にそう言った。
数日前に会ったばかりだったが、たまたま船が近くを通ったもんで、ほんのついでに寄ってみたんだが…。どうやらそんなに時間を置かなかったせいか、今日は機嫌がいいらしい。
泣き顔じゃなくて内心安堵しながら、森の中をスタスタと歩いていくアウラの後に続く。
「ローはこの島のこと全然知らないと思うからね。街には行けないけど、特別にこの森以外のところも案内してあげるよ」
「お前、前見て歩け。転んでも知らねェぞ」
後ろを振り返りながら話すアウラに呆れて声をかける。前を向いていても転ぶくせに何故振り返るんだ。
「ローが勝手にどこか行かないか見てるの!!」
「……分かった。消えねェから前見ろ」
どうやら俺は、コイツにあまり信用されてねぇらしい。必要以上に自分自身のことを話していない自覚はあるから、それも無理はねぇとは思うが。