第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
驚いて口を開こうとしたら、ウソップが声を出した。
『話は戻るけどよ、アウラは今どこにいるんだ?ドフラミンゴの目的は分からねェままか?』
ひとまず、疑問は飲み込んでウソップに答える。
「いるのは多分、王宮でしょうね。目的はまだわからない。トラ男は、あの子が大人しくしてる限り、ドフラミンゴも危害を加えることはないだろうって言ってたけど…」
『大人しくしてたらって…ありゃ敵地でじっとしてるタイプの女じゃねェだろ』
「それが分かってるからこそ、先に行ったんだろうな、ローは」
サンジくんがタバコの煙とともに呟く。
『おいおいおい、ちょっと待て。つまり、トラ男は今そこにいないのか!?』
「ああ。先に王宮に向かってる」
『それはまずいわね。彼、冷静かしら』
ロビンの声に、私もうーんと唸る。
さっき別れた時は、少なくとも動揺を表に出してはいなかった。普段と変わらないように見えた…のだけど。
ポーカーフェイスが通常運転の男だから、何とも言えないのよね…。
『うゥ…ッ、ヒック』
「ローはさっきの戦いでだいぶと消耗しているはずだ。体力が回復してから行くとは言ってたが…」
サンジくんも怪しげな様子。そりゃ、私たちだって止めようとしたけど、アイツ、船を出すように言ってすぐに消えちゃったんだもん。
『のんびり待ってはいないでしょうね。彼の心境を考えると』
『うぐっ、ヒック、うぅ…』
そう。それもあって、みんなに話せてよかったと思ったのよ。今ならきっとまだ間に合うから。
「ルフィ、今すぐトラ男を追いかけて王宮に行って欲しいのよ!!どうせドフラミンゴと闘うなら、トラ男一人に行かせる道理はないでしょう?…って、あんたはなんでさっきから泣いてんのよ!!!」
『ズビッ、ゆきんことトラ男のことは、うぅッ…任せとけ』
涙声に混じって、なんとも頼りない返事が聞こえてくる。
この国の境遇にそんなに胸打たれたわけ?
でもあんたがそこまで泣くことって…。
不審に思っていると、ルフィの感情をそっくりそのまま汲み取った電伝虫が震えだす。そして、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、叫んだ。
『だけど、ヒック…まさか生きてると、ズビッ、思わなかったんだぁ〜〜!!グスッ…』
──はああ????