第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
『ああ?つまりどういうことだ?』
「ゾロあんた、ほんっと人の話聞かないわね!!」
「まあまあナミさん落ち着いて。コイツがポンコツなのは今に始まった話じゃ…」
『あぁ?なんだとクソコックてめェおろすぞ』
「ああもう!二人とも黙って!!ゾロ、今度はちゃんと聞きなさいよ!だからつまり、さっきまでここにドフラミンゴがいて!!」
一回で聞きなさいよもう!
こっちには時間がないんだから……!!
「──アウラが攫われちゃったのよ!!」
電伝虫の受話器を握りしめ、ほとんど怒鳴る勢いでゾロにもう一度事情を話す。
サニー号でグリーンビットに向かったこと、そこにドフラミンゴとトラ男がいたこと、アウラの様子がおかしかったこと。
そして──。
あの後、ドフラミンゴは気を失ったアウラを無造作に抱えると、用事は終わったと言わんばかりに宙を駆けて行った。行き先はおそらく、彼が治めるというこの国の王宮。
「クソッ……!!!!!」
「待ってトラ男!!」
瞬発的に後を追おうとしたトラ男を思わず止めてしまったのは、あまりにも無謀だと思ったから。
「今追いかけてもきっと間に合わない…!!行っても返り討ちにされるだけよ!!あんたの回復の方が先!!」
──それに。
それに、あんたも見てたでしょう。
あの子はきっと、自らの意思であの男の元に行ったのよ。私だって認めたくはなかったけど、あの状況ではそれ以外考えられない。
トラ男も気づいていて、だからこそ一刻も早く取り戻したかったんだとは思うけど。
さすがに無茶だという自覚はあったのか、彼は珍しく苦痛に耐えるような表情を浮かべ、すでにルームを展開していた手をだらりと下げた。
そしてひとつ、重い息を吐いたのだった。