第18章 誘拐
彼女の大きな丸い目が安心したように細められると、心の奥がじんわり熱を帯びるようだった。本人には自覚がないんだろうけど、この子にはどうしても人を惹きつけてしまう魅力があった。
裏表がなくて素直な性格も、溌剌とした明るい声も、宝石のように輝く丸い瞳も。
その全てに魅了されて、彼女が困っているなら少々無理をしてでも力を貸したいと思ってしまう。一度出会ってしまえば、簡単には忘れられない娘だと思う。
こういう気持ちにさせる人を私は身近に一人知っていた。
「そういう意味ではルフィに似てんのかもね」
「…へ?誰が?」
「あんた」
「えっあたし!?」
目を見開いて私を見る。
そして、ちょっと不貞腐れたように呟いた。
「……あたし、あんなに能天気でも楽天家でもないのに」
それを聞いてますます笑ってしまってから、ふと思い出してポケットからあるものを取り出した。
「そうだ。あんた、さっきは受け取らなかったけど、やっぱりこれ持っておきなさい」
「…ビブルカード?」
もともと小さかったそれをさらに半分にちぎって、アウラに差し出す。
「ええ。言っておくけど、逃げろって意味じゃないわよ。あんた、この中じゃ一番"速い"でしょ。だから、万一、助けが必要になったときのために、あんたが持っておくの」
ゾウがどこにあるのか知らないけど、この子なら船が無くてもその島に行けるだろう。逃げるにしても、助けを呼ぶにしてもやっぱり持っておくべきだと思った。
アウラはそれを見つめたあと、断る理由がないと思ったのか今度は受け取った。
「…わかった」
そう言えば、使い方は知ってるのかしら。
さっきトラ男が取り出したときの怪訝そうな顔を思い出す。あの様子じゃ見たこともなかったに違いない。
一応、これがどういうものか説明しておこうと口を開く。
──その時。