第18章 誘拐
トラファルガー・ローという男のことを私はまだ完全には信用しきれないでいる。
頭がキレて戦闘能力もずば抜けて高いのはわかる。だけど、冷徹で無愛想なイメージが強いせいか、近寄り難いというのが今の正直な印象。いつも何を考えているのか分からないし。
それでも少しは信じていいと思えたのは、この少女を大切にしていることを知ったから。
できるだけ危険に近づけないように。
未然に全て自分一人で防げるように。
徹底した態度からは彼の強い意志が伺えた。きっと今までも、この子が知らないうちにそうやって守ってきたんでしょうね。それで、案外人間らしいところもあるんだ、と見直したの。
だけど、その彼の行動をアウラは望んでいないみたい。この子はきっと──。
「…あたし、ローに守られたいんじゃないの。あたしも、一緒に戦いたいのよ」
「ええ、分かってる。あの男は世の中の女が全員守られたいと思っているわけじゃないことをまずは知るべきね」
軽くため息をついて、アウラを眺める。
悲しそうに俯く少女。
この子にこんな顔させる奴を怒鳴り散らしたくなるわ。……あの男も、その気持ちは同じはずなんだけど。
「……あたしもみんなみたいに強くなったら、ローは一緒に連れて行ってくれるかなぁ…」
独り言のように小さくつぶやくアウラ。
それにすぐに答えることができない。
この少女がどれほど強くなっても、やっぱりあの男は置いて行くことを選ぶだろうと思ったから。
正直、アウラは今のままで十分強い。
一人でグランドラインを渡ろうとする度胸も、それを達成する強運も、並大抵ものじゃない。
素の戦闘力だって決して低くはないし、それになんと言っても自然(ロギア)系の悪魔の実の能力者だ。
それなのに、あの男がこの子を戦力と考えていないのは、ほかに理由があるから。決して、他の仲間と比べて実力が劣っていると思っているわけじゃないはず。
アウラを説得するための言葉を探すけれど、あんまり遠回しに言うのも良くない気がした。この子もちゃんと自分の置かれている状況を理解しなくては。
ふーっと息を吐き出す。