第18章 誘拐
……ほんっと見ててもどかしいったらないわ。
二人とも不器用なんだから。
呆れて大きくため息をつく。
シーザーの引き渡し&悪魔の実の製造工場破壊のために、殆どの仲間が船を降りた。今サニー号に残っているのは、チョッパー、ブルック、モモくん、アウラに、そしてこの私──ナミ。
ほんとはサンジくんも残ってくれるはずだったんだけど、あのバカ…いつの間にか居なくなってて。だから、アウラにしっかりしてもらわないとなんとも心許ないんだけど。
頼りになるはずの風を操る少女は甲板の隅で膝を抱えて蹲っていた。明らかに落ち込んでいる。
いつもかぶっている黒いキャスケット帽のせいで彼女の澄んだ瞳は見えなかったけど、硬く引き結んだ口元からどんな表情をしているのかは容易に想像がついた。
…そんな暗い空気出したって言ってしまったもんは仕方ないでしょうに。
そうは思うものの、心細げな細い肩を見ていると強い言葉をかける気には到底なれなくて。
私はもう一度ため息を吐いてから、アウラの前にしゃがみ込んだ。
「ねぇ、いい加減に元気出しなさいよ。悪いと思ってるんなら、帰ってきたときに謝まりゃいいのよ。謝っても許してくれない奴なの?アイツは」
少しだけ顔を上げたアウラの目は、今にも泣き出しそうに潤んでいた。
「……ううん。だけどあたし、本当にひどいこと言っちゃったの。ローにあんなふうに聞いちゃいけなかったのに……」
必死で堪えているのが分かるだけに、なんだかいじらしくて抱きしめたくなっちゃう。
……これはトラ男に感謝されるべきだわ。
慰めるのが男じゃなくて良かったと思うに違いない。
「あとでいくら請求しようかしら」
「…え?」
「こっちの話。とにかく!そもそも、どうしてあんただけが悪いと思うの。今まで相当我慢してきたんでしょ?ちょっとは反省すればいいのよトラ男も」
元気付けるためでもあったけど、半分は本心だった。きっぱりはっきり言い切ると、アウラは二度ほど目を瞬いた。
「怒って当然だと思う…?」
「当たり前よ。あんたを守りたいのは分かるけど、それは向こうのエゴであって、あなたの気にすることじゃないわ。我慢して辛い思いをするくらいなら、いっそのこと全部吐き出して困らせてやりゃいいのよ」