第3章 白と赤
「あぁミロだな」
隣でおっちゃんが笑う。
「うちの船の見習いだ。まだまだヒヨッコだが、あの通り元気だけはあるから船が賑やかでいい」
確かに、あの子を中心にみんな笑っている。
太陽みたいな子。
ふとそんな言葉が頭に浮かぶ。
海も似合うけれど、何となく広い原っぱで駆け回っているような、そんなイメージが湧く子だ。
「まあ仲良くしてやってくれ。そのうち向こうから寄ってくるだろう」
おっちゃんは笑ってつけ加えたあと、ふと思い出したようにこっちを向いた。
「あぁそうだ。ここにいるのもかまわねェが、ノースブルーの夜は冷えるぞ。日が落ちる前に中、入っとけよ」
「中」の時に親指をくいっと船内に向ける。
確かに、ミカヅキ島を離れてからちょっとしか時間が経っていないのにずいぶん寒くなった気もする。
なんとなく気づいてはいたけど、ミカヅキ島はノースブルーにしては比較的温暖だったみたい。
「うん、ここにいたらジョナサンも心配だしね」
あたしはもしかしたらノースブルーの本当の寒さをまだ知らないのかもしれない。
そんなことを思いながら、あたしは早々に船室に入って休むことにした。