第18章 誘拐
「ローだって、全然教えてくれてないじゃない。あたしにばっかり聞こうとしないでよ…!!」
暗く澱んだ心の中を全て吐き出すように、あたしはローに思いをぶつけた。もう、限界だった。
「いつも肝心なところは秘密にして。過去に何があったかちっとも教えてくれないし」
あたしが知らない、ローの過去。
それがわからないから、こんなにも不安になる。
怖くなる。どうして、あたしは。
どうしてあたしは、あなたと一緒に行ってはいけないの。
「13年前って何よ…。ローの大切な人って誰なの!」
言うはずじゃなかったことまで口からこぼれ出る。だけど、一度声に出すともう止まらなかった。
あたしに出会う前、何があったの?
どうして、あなたは、あたしに会いに来たの。
「──その人はどうして、ローを残して死んじゃったのよ…!!」
声に出してしまってから、あたしは自分の言葉に驚いて固まった。
──あ、間違った。
今のは完全に、間違った。
ローの目を見て、どうして止められなかったのかと、猛烈な後悔が押し寄せる。
「……っ」
ずっと、ローの過去に触れるのはタブーだと分かっていた。彼はそれに触れられたくないんだろう、と。
だから、今までいくら気になっても聞かないようにしてた。ローが話してくれるまで、待とうと思ってた。
なのに。
こんな、身勝手で、無遠慮に、自分の感情に任せて聞くことじゃなかった。
「おいどうしたどうした!?ケンカか?やめろよこんな敵の本拠地で」
「アウラ、あんた一回落ち着きなさい。どうしたの、さっきからそんなにカリカリして」
ウソップとナミの言う通りだ。
あたし本当にどうしちゃったんだろう。
「……分かった。もう聞かねェ」
長い沈黙の後、ぽつりと呟いたロー。
俯くあたしには、彼の表情は見えない。
……どうしよう。
本当に怒らせちゃった。
いや違う、多分傷つけちゃったんだ。
謝らないといけない。
そう思うのに。
肝心なところで言葉がでてこない。
こんなの、まるで子供の癇癪だ。
呆れられても仕方ない。
……もういやだ。消えてしまいたい。
──あたしはローの顔を見ることができず、彼が船を出ていくまで黙って俯くしかなかったのだった。