第18章 誘拐
そんなあたしの心情を知ってか知らずか、ローが突然こちらを向いた。そして、なにかを取り出す。
「アウラ、こいつをお前に渡しておく」
「…なに、これ」
「ビブルカードだ。おれたちに何かあったらこの紙が差す島に行け。そこにおれの仲間がいる」
この前話してくれたゾウって島のこと?
「おれ達に何かあったらって…」
それは、ローの身に危険が迫ったらって意味?あたしにここに残れって言っておいて、その上、何かあればそのまま逃げろって?
そんなの。
「…いらない」
「おい。おれが言ったことをもう忘れたのか?お前はここにいるべきじゃねェと…」
「いらないったらいらない!!」
思わず声を上げて、わざとローから顔を逸らす。
どうして一人で逃げろなんて言うの。
あたしは危険でも、あなたといたいって言ってるのに。
このむしゃくしゃを全部ローにぶつけてしまえたらどんなに楽だろう。思いっきり喚いて、困らせてやりたい衝動に駆られる。
だけど、彼の方もあたしの態度にだんだんとうんざりしてきているようで。聞こえてきた彼の声は、さっきよりいくらか冷たかった。
「……言いてェことがあるなら言え。お前の我儘に付き合ってやるほど暇じゃねェ」
……わがまま?
あたしがあなたのそばにいたいと思うのは、わがままなの?そんなにダメなことなの?
理由も教えてくれないくせに。
あたしの気持ちなんか、ちっとも考えてないくせに。
「……もう、いい」
どうせ思い通りにならないなら、我慢するのも馬鹿らしい。最後に言いたいことだけ言ってやる。
…それでローがどれほど困ることになっても、あたしの知ったことじゃないわ。