第18章 誘拐
やっぱりカッコいい……じゃなくて。
たしかに、黒い。全身真っ黒だ。
そしてその隣には同じく黒いワンピースに身を包んだミステリアスな美女──ロビンがいて。チョッパーが"おまえら"と言ったのはこれが理由だ。
2人とも高身長だから、並んだ様はかなり絵になる。バレないように変装しているのだけど、セレブのお忍びのようで逆に注目を集めそうなくらいだった。隣にいるのがあたしだったらああはならないだろう。
そんな二人を見ていると、さっきまでの苛立ちとは違ったモヤモヤが心に充満していく。
普段だったらなんとも思わないのに、日に日に募るストレスも相まって、今だけは感情をうまく誤魔化せる自信がなかった。
我ながらひどい。
嫉妬ってやつ。
余計なことを考えてしまわないように、できるだけ視界に入らないようにするけど、この距離では二人の会話まで遮断することはできなくて。
「…いいか。以前話したと思うが、おれたちはシーザーを連れてグリーンビットへ向かう」
「船じゃ行けないって言ってたとこね」
…作戦なんて、あたし聞かされてない。
あたしの知らない話を、そんなふうに目の前でしないでよ。
どうせ連れてってくれないなら、あたしのいないところでしてくれればいいのに。
「あぁ、奴は必ずそこへくる」
あたしも行きたい。
あたしだって、一緒に…。
痛みを感じるくらい、ぎゅっと唇を噛み締める。
悔しくて、心細くて、腹が立つ。
そして、無性に悲しかった。
どんなに足掻いて駄々をこねたってやっぱり。
彼の隣に立つのは、あたしではないのだ。