第18章 誘拐
「アウラ」
サンジが作ってくれたほっぺたが落ちそうなくらい美味しい朝食をぺろりと平らげ、1人甲板をうろうろと彷徨い歩いていた時。
聞き馴染んだ声があたしの名を呼んだ。
「…なに?ロー」
「なに、じゃねェ。お前、無自覚か…?」
呆れたような顔であたしを見るロー。あたしはその顔を見つめ返して、何を言われたのか分からずに困ってしまって眉根を寄せた。
…なによ。はっきり言って…って。
はっ、まさか。
あたしの顔になんかついてる??
サンジお手製の名前も知らない魚の塩焼きが美味しすぎて、朝っぱらからがっついちゃったのよね。
それを引っ付けていたのかと思い、慌てて口元をゴシゴシと擦ると、ローはますます呆れた顔であたしを見たあと、目線を上にあげた。思わず視線を追いかける。
そこには、これでもかというくらい大きく膨らんだ帆。風を受けてはちきれんばかりの、麦わら帽子を被ったドクロがあった。
ハッとして周りを見てみると、海を割る勢いで進むサニー号。チョッパーがころころと足元を転がっていった。
「うひょーーーーー!!はえーー!!」
「すっっげええええーーーーーー!!!」
大はしゃぎのルフィとウソップを見て、あたしはこれを巻き起こしているのが自分だということに気づく。
そりゃそうだ。
今ではこの船の周りの風は完全にあたしが掌握してたのだから。