第17章 岐路(Ⅱ)
あたしは覚悟を決めて顔を上げる。
やっぱり、これだけは聞いておかないといけない。聞くのが怖くて避けていたけど、それじゃだめだ。
「……ローは、あたしがここに来たこと、怒ってる?」
今までの彼の態度から大体答えは分かってる。
だからこれは、あたしのケジメだった。
「再会しても、ちっとも嬉しくなかった…?迷惑、だった…?」
「……お前、そろそろ中入れ」
「誤魔化さないでよ。あたし、ローがもう二度とあたしに会う気はなかったってことくらい、知ってるんだから。島から出たことをよく思ってないって…っ」
話している途中で言葉が詰まる。
言いながら、思った以上に自分がそう信じて疑ってないことに気づいた。
──もう、ここまで分かってるんだ。
何も言わずに置いて行ったのは、紛れもない決別の意思。
もう会う気はないと。そこにいろ、追いかけてくるなと。
再会してからも冷たくあしらうのがその証拠だ。
だから、そうだ、って一言返ってくるだけ。
そう、思っていたのに。
「……いや、それは違う」
ぽつりと聞こえてきたのは予想とは違う言葉だった。思わず振り向くと、言葉を選ぶようにローは静かに話しだす。
「…おれは別に、お前が海に出たことを否定する気はねェよ」
「…どういうこと?」
「島から出るなとは一度も言った覚えはない。出るも出ないも、お前の自由。もちろん、ここに来たのもな」
そう、言われてみれば。
ローもあの人も、あたしに向かって島から出るなとは一度も言っていない。言ったのはただ一つ、ひも飾りを外すなってことだった。
あたしはなんとなく、島から出てはいけないと思い込んでいたけれど…。
「じゃあ、ローはあたしがここに来たこと、怒ってない、の?」
「…それを制限する権利は誰にもねェよ」
一瞬彼の言葉を信じそうになる。
だけど、それじゃ納得できないこともいくつかあった。
じゃあ、どうしてあんなふうに突き放したりしたの。
再会してからローは何度もあたしを置いていこうとしたし。
仲間にする気はないと、隣に置く気はないと、足手まといだとも言った。
あれを怒ってないと言えるのだろうか?
どう考えても迷惑がってたでしょう。
そう思って口を開こうとしたら、ローがそれを遮るように軽くため息をついた。