第17章 岐路(Ⅱ)
人のこと馬鹿にして!!
何をそんな面白そうにしてるの。
こっちはこんなに苛立ってんのに。
向かっ腹を立てながらも、あたしは少しの懐かしさを覚えてることに気づいた。
──そう言えば、ローは、こんな笑い方をする人だった。
普段は好戦的な笑みで人のことを挑発するけど、たまに、今みたいに愉快そうに笑うのだ。間違っても"朗らか"や"快活"とは言えないけれど、どこか気を許したような、そんな笑い方を。
あたしはローのこの笑みが好きだった。森の中で必死に訓練したのは、もちろんライたちに勝ちたかったからだけど、ローのこの顔が見たかったからというのも、少しはあったのかも知れない。
そっとため息をつく。
……これじゃ、勝てっこないや。
あたしはきっと一生、あなたを追いかけてばっかりよ。一人で追いかけて、空回って、それでも諦めきれなくて。
せっかく会えたと思ったのに、やっぱり追い付かせてはくれないんだ。この人は。
あたしはずっと、一人で追いかけるだけ。
「……あー、もう、苦しいなぁ…」
自嘲気味に、気持ちを吐き出す。
…ローに聞こえないくらい、小さな声で。
──さっき、ナミとロビンが羨ましかった。
一緒に旅をしてくれる友だちがいて。
信頼できる仲間がいて。
一人で寂しかったかって…?
そりゃあ、もう。
つらくて、苦しくて、寂しくて。
何度も挫けそうになったよ。
人を殺して、自分を犠牲にして。
そこまでして会いにいく価値はあるのか?って。
何度も思って。
だけど、それでも。
もう一度会いたかったのよ。
──あなたに。