第17章 岐路(Ⅱ)
確かに、それが一番手っ取り早い方法だったのかもしれない。実際、そうして上手く渡り歩いている人は多い。ガールズシップなんてものもあるわけだし。
だけど、さっきの反応で分かったでしょう!?昼間、ゾロに詰められてあんなに間抜けに固まってしまったのに。
ガールズシップでも、あたしが参加できるのはせいぜい宴の席までで、お開きになった途端、オネーサンたちが寄ってくる海賊たちを押しのけてあたしを奥に引っ込めたのだ。彼女たちが言うには、ここから先はあたしにはまだ早い、らしい。
だから、彼女たちが上客と一緒に部屋に消えていくのを見送りながら、あたしは奥で後片付けに徹してたの!!
前半の海で例のテを使う時も、適当な男にすり寄って涙の一つや二つ落としてみたら、驚くことにみーんな鼻血を出してぶっ倒れてくれた。
そりゃたまには危うくなった時もあったけど、逃げ足だけは速いから、取り返しがつかなくなる前にスタコラ逃げ出していたのだ。
「…だからあたし、さっきの"続き"もロクに知らないの!!」
誤解を解くために海で渡ってきた経緯を自分で説明しながら、顔が熱ってくるのが分かった。
何を必死になって主張してるんだ、あたしは。これじゃ、経験ありませんって告白してるようなもんじゃない。
別に事実を述べてるだけ、ではあるのだけど、ムキになって声を荒げるようなことじゃ無いのは確かだった。
あたしはますます赤くなって口の中でぶつぶつと文句を言う。
「ほんと、何考えてんのよまったく…」
言ってから、ちょっと違和感を感じて隣の彼にちらと視線を移す。
あまりにも静かだ。あの挑発的な笑みで「ガキだな」って馬鹿にしてくるかと思ったのに。
視界に入ったローは、あたしの慌てっぷりなんてまるでどうでもいいようだった。あたしが見ているのも気付かない様子で、
「そう思うだろ普通は。……あの人にあわせる顔がねェところだった」
低い声で言ってから、長く息を吐いた。