第17章 岐路(Ⅱ)
扉を開けて甲板に出る。
夜になると少し気温が下がって、ひんやりとした空気が体を包む。
熱った顔に夜風が気持ちいい。
ちょっと伸びをして空を仰ぐと、数えきれないほどの光があたし見下ろしていた。
…うん。
夜の航海も、悪くない。
そう思って少し頬を緩めた時、
「…寝れねェのか?」
突然声が聞こえて、あたしは危うく悲鳴をあげそうになった。振り向いて声の主を確認し、さらにどくんと心臓が跳ねる。
「ロー……」
ローは、片膝を立て、船べりに寄り掛かるようにして座っていた。自分の身長ほどもある大太刀──彼の愛刀、鬼哭を傍に立て掛け、怪訝そうにこちらを見つめている。
真夜中だと言うのに、彼には隙なんて一切無さそうだった。多分、寝てなかったんだろう。
ついさっきまで話題にしていただけに、何となく気まずい。だけど、一瞬の迷いの後、あたしは思い切って聞いてみた。
「隣、座っていい?」
このままベッドに戻るのも、避けているようでなんだか変だし。まだ寝るつもりがないなら、少しくらい付き合ってくれるかな、と。そう思ったのだ。
返事はない。
だけど、彼の場合、だめと言わないってことはいいってことだ。あたしは勝手にそう判断して、ローの左隣に腰を下ろす。
拳3個分の微妙な間隔。
あたしはまだ、再会後の彼との距離を計りかねているのかも知れない。