第17章 岐路(Ⅱ)
自分を守るように両膝を抱えながら、調子を取り戻すためにあえて明るい調子で話しかけてみる。
「ね、そういえば。あたし、ローが一人でいる理由をまだ聞いてなかった。他の仲間は今どこにいるの?」
また無視されるかと思ったけど、今度はちゃんと返答があった。
「…ゾウだ」
「ぞう…?」
「あぁ。ドレスローザでの用事が終われば、おれたちもそこへ向かう」
「ふぅん。一緒にいないのは、それも作戦の内ってこと?」
「…まぁ、そんなとこだ」
そっけない返事。
だけどこれが彼の通常運転。
変わらないなぁと思いながらちらりと横を見てみると、ローはちょっと俯いて目を閉じていた。
彫りの深い端正な横顔に帽子の影がかかる。いつも不機嫌そうに寄せられている眉間の皺が無いと、どこかあどけなく見えた。
なんとなくあんまり見てはいけないような気がして、あたしは前を向いてからまた口を開く。
「信頼してるんだね。どんな人たち?」
束の間の沈黙。
やがて、ぽつりと返答がくる。
「……人間が19と、白熊1匹」
…誰が構成を言えって言ったのよ。
「もっと他にあるでしょう。どんな性格で、どんなことで喜んで、いつもどんな話をする、とか。そういうのを知りたかったんだけど」
呆れてローを見ると、彼は今度は目を開けていた。そしてちょっと居心地悪そうにその目を逸らす。
「会って自分で確かめりゃいいだろ」
「仲間に入れてくれないけど会わせてはくれるの?」
「……会いてェならな。勝手にしろ」
無愛想にそれだけ言う。
ふぅん…。
ちょっとだけ、考え直してくれたんだろうか。
さっきはあんなにあたしを突き放してたのに。
一緒にいてもいいの?
これからずっと?
あたしがそう思ったのが分かったのか、彼はふと思い出したように横目でこちらを見た。
「…安全が確保できるまでは一緒にいてやる。その後は自分で考えろ」
そして、少しだけ口角を上げて続ける。
「おれも、ずっとガキの面倒見るのはごめんだからな」
揶揄うような、挑発するような、そんな口調で。