第17章 岐路(Ⅱ)
そして少し黙ったあと、話を変えるように切り出す。
「で、どうすんの?」
「どうするって?」
「これからの話。気持ち、伝えるの?…どうせバレるのは時間の問題のような気もするけど」
…そんなこと、考えたことなかった。
気持ちを自覚してから再会することしか考えてなかったから、会えたらどうするかなんて、全く決めてなかった。
「今はまだ、考えてない。あたしを仲間にしてくれる気はさらさら無いみたいだし。変なこと言って、一緒にいられなくなるのは嫌だから」
あたしは困って笑う。
ローが本気であたしを置いていくと決めたら、もうどうしようもないってことくらい、分かってる。あたしは結局、彼が赦す範囲でワガママを言っているだけ。
彼が本当に決断してしまったら、逆らうことなんてできないの。
だから、これ以上の関係を求めるのは、分不相応ってやつだ。あたしだって馬鹿じゃないから、自分の立場くらいちゃんと弁えてるつもり。
思いながら、ふと顔をあげる。
「でもナミ、これだけは言えるんだけど。あの人、絶対なんにも気付いてないし、考えてないよ。あたしに向かって、何で海に出た?って聞いたくらいなんだもん」
あんた以外にどんな理由があるっつーのよ。
今思い出しても何だか腹が立ってくる。
「…あたしがここにいることに、自分は一切関係ないと思ってんのよ、あの男は」
小声で愚痴るあたしを見て、ナミも不憫だと思ったのか苦笑いでなだめる。
「まあ、ああいうタイプの男は良くも悪くも鈍感だから」
「彼、船長さんだものね」
「それは何か関係があるの?」
「海賊のキャプテンなんて、とんでもなく自由奔放で頭がぶっ飛んでる奴しかやってらんないってことよ。…ウチのがそうみたいにね」
ナミは最後、ため息をつくようだった。
ああ、なるほど。
確かに。
そう言えばこの人たちのボスは、あの人だもんね。麦わらの彼を思い浮かべて、彼女たちの気苦労の絶えなさを知る。
あんなのと旅してちゃ、そりゃあ、肝も座るわ。