第17章 岐路(Ⅱ)
ロビンはやや困ったようにつぶやいてから、思い出したように頬を緩めた。
「それにしても、演技と思えないくらい気持ちがこもってたわね。ゾロのこと気に入っちゃった?…それとも、情熱的な視線を送る相手は他にいるのかしら」
「…え」
「ウフフ」
ま、まさか。
それって。
「ね、ねぇロビン、まさかとは思うけどそれって…」
「なになに。2人ともなに話してんの?」
「フフ、楽しい話よ」
モゾモゾと動く音が聞こえて、ナミがロビンの奥から顔を出す。
「…な、ナミも起きてたの」
「起きてたんじゃないわよ。起きたの。楽しい話って何?アウラの恋の話?」
「な……っ」
肘をついて、ぺろりと舌を出すナミを見て、あたしはもう全部諦めることにした。
2人ともまだ寝る気はないみたいだし。
この2人なら、いっか。
ため息をつく。
「あたしって、そんなに分かりやすいかなぁ…」
「あれで隠してるつもりだったの?」
「……一応」
ナミはしばらく楽しそうに笑っていたけど、突然真面目な顔つきになった。小声で囁く。
「だって、追いかけてきたんでしょう?あの男を。ここまで、たった1人で」
「…まあ」
「寂しかったでしょう」
一切ふざけていない、ナミの言葉。
どきりと心臓が跳ねた。
寂しかった…?
「そりゃあ、そうだけど」
なんとか取り繕って笑顔を作る。
──寂しかった。
それはその通りだ。
だけど、あたしは1人でも平気だった。
だってその方が楽だったから。
…また友達を失うくらいなら。1人の方が。
「でも来てみれば大したことなかったかなぁって、あはは」
「あんた、思ったよりずっと強いわ」
ナミはしみじみと言って、ふぅ、と息を吐いた。