第17章 岐路(Ⅱ)
シーザーは人造悪魔の実の"素"を造ることができる重要人物らしい。
パンクハザードでローは、通称"SAD(エスエーディー)"という悪魔の実の"素"を全て破壊した(いつの間に?と思ったけど、多分あたしが寝てた間でしょうね…)。
悪魔の実を造ることができなければ、重要な取引相手である百獣のカイドウの逆鱗に触れることになる。
だから、もう一度SADを造るために、ドフラミンゴはシーザーを取り戻す必要があるはず、なのだけど。
「ゾロあんたまさか、シーザーの代わりにアウラを囮にしようって言うんじゃないでしょうね!?」
ナミが声をあげる。
「あ、あたし、役に立てるんなら囮でもなんでもやるよ」
「させねェよ。お前は黙ってろ」
ローに一蹴されて思わず口をつぐむ。
あたしの話をされているようなのに、イマイチ強く出られない。あまりに突拍子のない話すぎて、まだ実感がわいていないのかも知れない。
「…そうは言ってねェ。ただ、守るんなら事情は知っておいた方がいいだろ」
ゾロの冷静な意見に、さっきまで淡々と状況を説明していたローは珍しく沈黙した。少し考えたあと、その口を開く。
「…奴がどっちを優先するかは今の時点じゃあなんとも言えねェな。商売に実害が出ることを考えりゃあ、シーザーは取引条件としては申し分ねェはずだが」
「出たとこ勝負ってわけか」
「…そういうことだ。まあ、遅かれ早かれ、あの男なら欲しいもんは全て奪りにくるだろうな」
そして最後にローは、独り言のように付け加えた。
「……奴は、"家族"に対して異常なほど執着している。生き別れの妹がいると知れば欲しがるのは確実だった。だから、見つからねェように隠していたんだが」