第17章 岐路(Ⅱ)
「…ドフラミンゴだ」
「…え?」
「ドンキホーテ・ドフラミンゴ。ドレスローザ王国の現国王」
………は、はあ。
突然思いもかけない名前が出てきて、あたしはマヌケにもぽかんと口を開けた。
ドフラミンゴって、たしか、ローと同じ王下七武海の?
その男が、一体なんだっていうの。
「昔、おれのボスだった男で、お前の──」
ローはそこで言葉を切り、あたしを見る。
目があった瞬間、その目が少し、揺れた気がした。
ローがこれから話すことが、あたしにとって喜ばしいこととは限らない。
そのことに今更になって気付く。
『…お前が島から出なけりゃ、一生知る必要の無かったことだ』
さっきのローの言葉。
…ローは、あたしが知らない方がいいと思ったんだ。知らない方が幸せだ、と。
それを、今、教えようとしてくれている。
彼はやがて覚悟を決めたように、重い口を開いた。
「────お前の、実の兄だ」
その目が一瞬だけ哀しそうに見えたのは、きっと気のせいじゃない。
「…このタイミングでお前がここに来たのは、そういう巡り合わせだったのかもな……」
独り言のようにそう呟いて、あたしがずっと知りたかったこと──彼がここに居る理由について、話し始めたのだった。